「いくつかの波間」
2024年9月5日(木)-9月23日(月)
(武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス2号館1階)
「いくつかの波間」
ここ数年、家によく人が訪れてくれるようになった。その「家」とは、2011年の津波によって1階天井上まで浸水した元実家だ。直後の応急修理として窓と玄関を入れなおし、2階部分には電気水道ガスを引きなおしている。内側の損傷と比べて目立った外傷は少なく、現在は、自分の制作場所兼倉庫のような形で使用しており、そんな「家」をわりと多くの人が見学に来てくれた。
「家」に足を踏み入れた人たちは、目の前の「家」と各々の家の記憶とを重ねて見ているようだ。自分の家、祖父母の家、一般的な家、廃屋と定義されるような家、その他、家から想起される諸々。そこには、「家」の欠損を埋め合わせるためのイメージにとどまらない積極性があるようだった。人の身体ごと受け入れる性質をもっている「家」が、見られるだけではない、見る者と「家」との相互性を含む独自の関わりを生じさせているのではないかと思えた。私は小2から高3まで暮らし、帰省の度に自室を使用していたその家を重ねて見ている。
この家には波の音が届く。寄せては引いてを繰り返す波は、降り続き地に吸い込まれ続ける雪や、浮かんでは重なり消える記憶の断片の在りように似ているなあとよく思う。例えば、津波で運ばれてきた砂浜の砂と防風林の松葉が残る室内。震災後に聞いた、当日「家」で過ごすことができなかった父の雪の話。「家」には暮らしがあり、津波で破損した傷があり、現在の時間があるということ。ここで目にし、言葉にし、作品にしてきたいくつかのことが頭をよぎる。連続する時間による出来事の重なり合いが波に似ているとしたら、その「間(ま)」に立って、何が見えているのかを話したり聞いたりしたい。
2024年 ちばふみ枝
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■ちばふみ枝個展「いくつかの波間」
■会期:2024年9⽉5⽇(⽊)-9⽉23⽇(⽉)/11:00-17:00
※⽇曜休廊
※9/16(月)、23(月)の祝⽇は開廊
■会場:gFAL
(Gallery of The Fine Art Laboratory)
〒187-8505 東京都⼩平市⼩川町1-736 武蔵野美術⼤学 鷹の台キャンパス2号館1階
※交通アクセス→こちら
■観覧料:無料
■主催:Gallery of The Fine Art Laboratory(彫刻学科研究室企画 問い合わせ先:042-342-6055)
※9⽉5⽇(⽊) 15:00より2号館202にてアーティストトークを⾏います。
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【新聞掲載情報|2024年8月31日】
石巻かほくに掲載していただきました。
web版はこちら→石巻かほく メディア猫の目
【新聞掲載情報|2024年9月4日】
石巻日日新聞に掲載していただきました。
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